第5回なっとく健康スクール

8月25日第5回なっとく健康スクール「メタボリックシンドローム(メタボ)」偏を行いました。新聞やCMなどでもメタボの名前を見る機会が増えていると思います。メタボが注目されている理由は、以前から血圧は高ければ高いほど、あるいは血糖値は高ければ高いほど心疾患や脳卒中などを起こしやすいことが分かっておりましたので、メタボが注目される以前は重症度の高い人だけを治療すれば良いと思われていました。ところが、血圧、中性脂肪、血糖値などが少ししか高くないにも関わらず狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患や脳血管疾患などの重篤な疾患に罹患される方が少なからず見えました。その方々の多くがメタボであることがわかり、メタボの早期発見と早期治療介入を行なうために、国を挙げて特定健診(いわゆるメタボ健診)が取り組まれるようになりました。今回はそのメタボがどんなもので、放っておくとどんな危険が待ち受けているのか、そしてその対策はどうすれば良いのかを中心にお話し致しました。満員の会場から沢山の質問を頂き、とても盛況な会となりました。中には、「この頃高血圧を始めとした種々の生活習慣病の診断基準が変更されているのは何故か」との質問がありました。それについても、上記に述べた生活習慣病の考え方が、数々の研究から修正されてきているためと説明致しました。重症度の高い一つの生活習慣病だけを抱えている人では無く、重症度が高くなくても複数の生活習慣病を抱えた人の方が、将来大きな病気になる確率が高いことが分かってきたためです。だからと言って、血圧の数値だけを見て、血圧の高い人も少ししか高くない人も大きな疾患にかかる確率はあまり変わらなかったとする研究は間違っています。血圧の高い人は、その他の生活習慣病の合併をしっかり把握し、合併症の数が多ければその分将来重大な虚血性心疾患、脳血管疾患に罹患する可能性が高くなりますので、減塩だけでは無く包括的な生活習慣の是正が必要になります。生活習慣の是正を行っても目標の値まで管理できない場合は、治療薬を検討する必要があります。
 医療経済的には診断をするためにかかる費用や診断後に始めから薬物療法を行わず生活習慣の是正のみで重篤な虚血性心疾患や脳血管疾患を予防出来れば、将来、子供たちに大きな借金を残さず、税金も高くならずに済むと思います。でも僕はここに社会的な落とし穴があると思っています。腹囲だけを以てメタボの診断基準を満たすわけでも無いのに、腹囲だけがクローズアップされています。もともと脳血管疾患や心疾患は家系的な背景が強いため、メタボを検出することでその家系の人たちが浮き彫りになります。それらの方々を早期発見し治療を行なうことは弱者を守ることであって、迫害やいじめの材料では有りません。この点を充分に理解し、みんなでメタボ対策をしていくことが重要だと思います。